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2018年12月22日 (土)

地方議会議員が社会福祉法人理事を兼職することの可否

■ 設例
A市の市議会議員は、次の各社会福祉法人の理事に就任できるか。なお、これまでにA市議会議員が当該各法人の理事に就任した先例はない。
(1)A市から補助金の交付を受けて福祉事業を行っている社会福祉法人B
(2)A市から委託を受けて児童の保育を行っている社会福祉法人C
■ 回答
★ 結論
  BCいずれの法人についても、当該法人やA市議会の内規で禁止されていない限り、理事就任は可能と考える。
 
 但し、理事就任後、理事会を続けて欠席するようなことがあると、所轄庁による指導監査において、理事として不適当という指導を受ける可能性があるので、理事会を続けて欠席しないよう留意する必要がある。
 
★ 理由
 
1 地方自治法92条の2に違反しないこと
 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない(地方自治法92条の2)。
これは、議会運営の公正を保障するとともに、事務執行の適正を確保することを趣旨とするものである。
かかる趣旨に鑑み、同上の「請負」とは、ひろく業務としてなされる経済的又は営利的な取引契約を含む一方、一定期間にわたる継続的な取引関係に立つものに限られ、法令等の規制があるため当事者が自由に内容を定めることができない取引契約や、継続性がない単なる一取引をなすにとどまる取引契約は含まれない、と解されている。
(平成30年4月25日・総務省自治行政局行政課長による通知)
これを設例の法人Bについてみると、補助金の交付は、私法上の贈与に類するものであり、A市と当該法人との経済的又は営利的な取引行為ではないため、地方自治法92条の2の「請負」にはあたらない。
次に、設例の法人Cについてみると、当該法人がA市(長)から委託を受けて児童の保育を行うことは、児童福祉法24条の措置として行われるものであり、その費用等の内容を当事者が自由に定めることができないから、地方自治法92条の2の「請負」にはあたらない。
したがって、A市の市議会議員が、設例の社会福祉法人BCの理事に就任することは、地方自治法92条の2に違反しない。
(参考文献:自治実務セミナー2018年8月号28頁以下
               新版逐条地方自治法第9次改訂版・松本英昭著358頁以下)
  
 
2 社会福祉法人審査基準に違反しないこと
 
平成12年12月1日付厚生省大臣官房障害保健福祉部長等による通知
別紙1「社会福祉法人審査基準」(最終改正:平成28年11月11日)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000142654.pdf 9~10頁は、社会福祉法人の評議員や役員等理事の資格について、次のとおり記載している。
 
 

(1) 関係行政庁の職員が法人の評議員又は役員となることは法第61条に規定する公私分離の原則に照らし適当でないので、差し控えること。ただし、社会福祉協議会にあっては、評議員又は役員の総数の5分の1の範囲内で関係 行政庁の職員が、その評議員又は役員となっても差し支えないこと。

 (2) 所轄庁退職者が評議員又は役員に就任する場合においては、法人における評議員又は役員の選任の自主性が尊重され、不当に関与することがないよう、 所轄庁においては、法人との関係において適正な退職管理を確保すること。

 (3) 実際に法人運営に参画できない者を、評議員又は役員として名目的に選任することは適当でないこと。

 (4) 地方公共団体の長等特定の公職にある者が慣例的に、理事長に就任したり、 評議員又は役員として参加したりすることは適当でないこと。

 (5) 次に掲げる者は、評議員又は役員となることはできないこと(法第40条 第1項及び第44条第1項) 

  法人(同項第1号)

  成年被後見人又は被保佐人(同項第2号)

  生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又は法の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者(同項第3号)

  ③に該当する者を除くほか、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、 

又は執行を受けることがなくなるまでの者(同項第4号)

  所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役(同項第5号) 

(6) 暴力団員等の反社会的勢力の者は、評議員又は役員となることはできないこと。 

 

 では、設例において、A市議会議員が法人Bや法人Cの理事に就任することは、上記(4)「地方公共団体の長等特定の公職にある者が慣例的に、理事長に就任したり、評議員又は役員として参加したりすることは適当でないこと」にあたるか。

注:本ブログ執筆時点(H30.12.12)で、厚生労働省は、この(4)の基準の解釈について、通知(技術的助言)を出していない。そこで、以下は、私見である。

まず、社会福祉法人審査基準が、地方公共団体の長等特定の公職にある者が慣例的に理事長に就任することを禁止した趣旨は、理事としての職務を全うしない名目的理事が選任されることを防止するためであると考えられる。

そうであれば、社会福祉法人審査基準が適当でないという「慣例的」理事とは、理事としての職務を全うしない名目的理事を指すと解される。

さらに、「慣例的」という文言は、同様の事象が複数回繰り返されることを意味するから、市議会議員が理事に選任された先例がない法人においては、市議会議員が理事に選任されることは「慣例的」にあたらない。

これを設例の法人についてみると、就任時には理事としての職務を全うしているか否か(名目的理事か否か)の判断はできないうえ、設例の各法人には市議会議員が理事に選任された先例がないのであるから、「慣例的」にはあたらない。

したがって、社会福祉法人審査基準にも違反しない。

 

3 理事会の欠席が続くと、指導監査において「不適当」との指摘を受ける可能性があるので、理事会を続けて出席しないよう留意する必要があること

厚生労働省が出している「指導監査ガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000368021.pdf

の17頁に、次の記載がある。

『 理事会の役割の重要性に鑑みれば、実際に理事会に参加できない者や地方公共団体の長等の特定の公職にある者が名目的・慣例的に理事として選任され、その結果、理事会を欠席することとなることは適当ではないため、理事にこのような者がいないかについて確認する。 この場合の理事として不適当であると判断するための基準は、原則として、当該年度及びその前年度において理事会を2回以上続けて欠席している者であることによることとする。 』

したがって、理事会の欠席が続くと、指導監査において「不適当」との指摘を受ける可能性があるので、理事会を続けて欠席しないよう留意する必要がある。

 

 

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