カテゴリー「相続」の記事

2014年11月 4日 (火)

相続人の一人による土地の無償使用

一般に、使用借権の負担が付いた土地は、更地に比べ売却が困難になるため、その評価額は、更地価格の1~3割程度減価されます。

 

もっとも、遺産である土地の上に相続人の一人が被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償で使用している場合、すなわち相続人の一人が使用借主である場合において、当該相続人が当該土地を相続する場合には、別段の考慮が必要です。なぜなら、当該相続人は、当該土地を相続後に同土地上の建物を取り壊して更地にして売却することもでき、使用権の負担のない土地を取得する場合と同等の利益を享受できるからです。

 

この点を解決する方法(理屈)は、2つあります。

 

1つめの方法は、当該土地を更地と評価する方法(いわゆる自用地理論)です。

 

東京家審昭和61年3月24日、福岡高決昭和58年2月21日、大阪高決昭和49年9月17日などは、この方法を採っています。

 

この方法のメリットは、簡便であることと、当事者に容易に理解していただけることです。

 

2つめの方法は、当該土地を使用借権の負担が付いた土地として減価したうえで、当該土地上に建物を建てその土地を無償で使用している相続人は、使用借権の設定を受けたことにより、土地使用借権相当額について特別受益を受けたと考え、土地使用借権相当額を相続財産に持戻しさせる方法です。

 

本稿執筆時点で、横浜家裁本庁において遺産分割事件を担当しておられる片岡武裁判官のご著書「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」(日本加除出版株式会社)の立場です。

 

この方法は、使用借権減価をしたうえで、減価分を特別受益として相続財産に持ち戻すという二段評価をすることにより、当該土地を更地評価する方法と同一の結果を導くもので、やや複雑ですが、持ち戻しが不当な場合には「持ち戻し免除の意思表示」の認定により結論を修正できる点でメリットがあります。

 

 

2014年4月10日 (木)

代償分割にご注意

遺産である不動産を分割する場合、次の方法が考えられます。

(1)現物分割(不動産を現物で分ける方法)

(2)代償分割(相続人の一部が不動産を取得し、その余の相続人にお金を払う方法)

(3)共有分割(複数の相続人が不動産を共有しておく方法)

(4)換価分割(不動産を第三者に売却し、その代金を分割する方法)

以上の分割方法のうち、代償分割により不動産を取得しようとする人は、被相続人(またはそのご先祖)が当該不動産をいくらで取得したか調べておくべきです。

なぜなら、将来、当該不動産を売却することになったときに生じうる利益が過大となり、多額の税金を支払う羽目になりかねないからです。

例えば、被相続人が今から30年前に購入した土地を、5年前、相続により取得したAさんが、今年、この土地を3000万円で売却し、売却時に、200万円の経費を支出したとします。

被相続人による土地の取得費を1000万円とすると、Aさんに生じた所得は、次のように計算されます。

3000万円-(1000万円+200万円)=1800万円

そこで、Aさんは、売却後、次の税金を支払うことになります。

ア 所得税

1800万円×15%=270万円

イ 復興特別所得税

270万円×2.1%=5万6700円

ウ 住民税

1800万円×5%=90万円

(なお、取得費が分からない場合には、譲渡価格(上記事例では3000万円)の5%が取得費とみなされます。)

相手方代理人が説明してくれないのはもちろんですが、裁判所も、通常、代償分割をすすめようとしている相続人に対し、ここまでの説明をしてくれません。

代償分割により不動産を取得しようとする相続人の代理人は、当該不動産の取得費を調査し、将来売却した場合にかかる税金を試算し、これを依頼者にご説明したうえ、それでも代償分割でよいか、よく話をしておく必要があります。

私は、新人の頃、こうした調査や説明を省き、後日、代償分割により取得した不動産を売却した依頼者に、たいへんなご迷惑をかけたことがあります。(その依頼者は、たいへんお優しい方で、慰めと励ましのお言葉をかけてくださいましたが・・・)

皆さんは、十分に気をつけてください。

2014年3月30日 (日)

持戻免除の意思表示(1)

被相続人は、意思表示によって、特別受益者の受益分の持戻しを免除することができます(民法903条3項)。そして、民法903条3項は、意思表示の方式について特に制限をしていないので、生前贈与の持戻免除については、贈与と同時でなくともよく、明示でも黙示でもよいと解されています。

他方、遺贈による特別受益の場合、遺贈が要式行為であることから、持戻免除の意思表示も遺言によってなされる必要があるとするのが通説または多数説です。

この点について、大阪高裁が、平成25年7月26日、遺言不要説を採ったともみられる決定を出しました(大阪高裁平成25年(ラ)704号・判例時報2208号60頁)。

もっとも、同決定は、遺言不要説に立つとしても、遺贈の場合、生前贈与の場合と比較し、黙示の持戻免除の意思表示の認定は、より厳格に行われなければならない旨述べています。

以下、同決定の一部を引用します。

「本件遺言には持戻免除の意思表示は記載されていない上、仮に遺言による特別受益について、遺言でなくとも持戻免除の意思表示を証拠により認定することができるとしても、方式の定められていない生前贈与と異なり、遺言という要式行為が用いられていることからすれば、黙示の持戻免除の意思表示の存在を認定するには、生前贈与の場合に比べて、より明確な持ち戻し免除の意思表示の存在が認められることを要すると解するのが相当である。」

2013年12月18日 (水)

養子の子の相続権

被相続人  A

Aの実子  B

Bの実子  C

Aが亡くなる前にBが亡くなった。

上記事例で,Cは,Aの相続人となります(民法887条2項本文)。いわゆる代襲相続です。

では,BがAの養子である場合にも,Cは,Aの相続人となるでしょうか。

結論は,Cの出生時期により異なります。

CがAB間の養子縁組成立後に出生した場合,Cは,Aの相続人となります(民法727条参照)。

CがAB間の養子縁組成立前に出生していた場合,Cは,Aの相続人となりません。被相続人の直系卑属でない者には代襲相続権が認められないところ(民法887条2項但書),養子縁組前に出生していたCはAの直系卑属ではないと考えられているからです(大判昭和19年6月22日)。

養親Aは,Bとの養子縁組前に出生していたBの子CにもAの財産を相続させたいのであれば,その旨の遺言をしておく必要があります。

2013年7月30日 (火)

遺留分減殺請求(2)

 遺留分減殺請求権は、遺留分権利者(遺留分を侵害された人)が相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法1042条前段)。


  そこで、遺留分減殺請求権は、配達証明付きの内容証明郵便によって行使し、上記の1年以内に遺留分減殺請求をした事実を証拠化しておくのが通常です。

 
 では、遺留分減殺請求権が行使されることを察知した相手方が、遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便の受取りを拒否した場合は、どうなるのでしょうか。

 この点については、平成10年6月11日に、遅くとも留置期間の満了した時点で、受取人に到達したものと認められる旨の最高裁判決が出ています。つまり、上記事例で郵便物の受取りを拒否されても、遺留分減殺の意思表示は有効となります。


  少し長いですが、以下、上記判決の一部を引用します。 

「遺留分減殺請求の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺請求の意思表示または少なくともこれを含む遺産分割協議の申し入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。」(最判平成10年6月11日民集52巻4号1034頁)

2013年7月23日 (火)

遺留分減殺請求(1)

 遺留分とは、被相続人の財産の一定割合を確保しうる相続人の地位をいいます。

 例えば、相続人が妻A、子BCDであった場合、各相続人は本来の法定相続分(妻Aは1/2、子BCDはそれぞれ1/2×1/3=1/6)の2分の1(妻Aは1/2×1/2=1/4、子BCDはそれぞれ1/6×1/2=1/12)を遺留分として確保することができます。


 つまり、被相続人が全財産をEに遺贈する旨の遺言をしていたとしても、AはEに対し相続財産全体の1/4を、子BCDはそれぞれEに対し相続財産全体の1/12を支払うよう請求することができます。この請求のことを、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。


  遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合には3分の1、その他の場合は2分の1です。ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。

  このように、法が、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認め、被相続人による財産処分の自由に制限をかけたのは、相続人の生活の安定や財産の公平な分配を図るためです。

 
遺留分をめぐる応用問題については、後日また解説することにします。