カテゴリー「不動産」の記事

2017年9月30日 (土)

固定資産評価審査委員会運営研修会

平成29年7月4日、日経ホールで行われた固定資産評価審査委員会運営研修会に参加してきました。これは、地方自治体にもうけられた固定資産評価審査委員会の委員向けの研修です。一般財団法人資産評価システム研究センターという団体が主催しています。

 

全国から人が集まっており、会場の日経ホールは、ほぼ満席でした。

 

午前10時20分から午後3時30分まで、1時間程度の昼休憩時間を除き、「固定資産税制度の現状と課題」「審査委員会の運営について」「固定資産税評価関係判例解説」という3つのテーマについて、総務省と横浜市から派遣されてこられた講師による講義が行われました。

 

固定資産評価の問題は極めて難解ですし、審査請求や取消訴訟に至る事件数は決して多くありませんが、現状、これを積極的に取り扱う弁護士はほとんどいないように思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015年4月 4日 (土)

賃料自動改定特約の効力

一定の期間土地の地代や借賃を増額しない旨の特約は有効であり(借地借家法11条1項但書)、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約も有効です(同法32条1項但書)。

逆に、一定の期間地代や借賃を減額しない旨の特約については、これを許容する明文の規定がなく、無効と解されています(大判昭13・11・1民集17-2089)。したがって、一定の期間賃料を減額しない旨の特約があっても、賃借人は、賃貸人に対し、賃料の減額請求をすることを妨げられません。

では、一定の基準に基づいて将来の地代や借賃を自動的に決定していく自動改定特約の効力については、どうでしょうか。

 この点については、判例があり、賃料の自動改定特約は、借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には有効であるとしつつ、特約時に賃料の改定基準を定めるにあたって基礎とされていた事情が失われることにより特約の効力が失われる場合がありうる旨述べています(最判平15・6・12民集57-6ー595)。

少し長いですが、以下、この判例を引用します。

「建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約の当事者は、従前の地代等が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、借地借家法11条1項の定めるところにより、地代等の増減請求権を行使することができる。これは、長期的、継続的な借地関係では、一度約定された地代等が経済事情の変動等により不相当となることも予想されるので、公平の観点から、当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるようにしたものと解するのが相当である。この規定は、地代等不増額の特約がある場合を除き、契約の条件にかかわらず、地代等増減請求権を行使できるとしているのであるから、強行法規としての実質を持つものである

 他方、地代等の額の決定は、本来当事者の自由な合意に委ねられているのであるから、当事者は、将来の地代等の額をあらかじめ定める内容の特約を締結することもできるというべきである。そして、地代等改定をめぐる協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため、一定の基準に基づいて将来の地代等を自動的に決定していくという地代等自動改定特約についても、基本的には同様に考えることができる。

 そして、地代等改定特約は、その地代等改定基準が借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には、その効力を認めることができる

 しかし、当初は効力が認められるべきであった地代等改定特約であっても、その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同項に基づく地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。

 これを本件についてみると、本件各土地の地代がもともと本件各土地の価格の8%相当額の12分の1として定められたこと、また、本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は、いわゆるバブル経済の崩壊前であって、本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併せ考えると、土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で、時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として、3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は、そのような経済情勢の下においては、相当な地代改定基準を定めたものとして、その効力を否定することはできない

 しかし、土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては、上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、本件増額特約によって地代の額を定めることは、借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。したがって、土地の価格の動向が既に下落に転じ、当初の半額以下になった平成9年7月1日の時点においては、本件増額特約の適用を争う上告人は、もはや同特約に拘束されず、これを適用して地代増額の効果が生じたということはできない。また、このような事情の下では、同年12月24日の時点において、上告人は、借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権を行使することに妨げはないものというべきである。」

2015年4月 3日 (金)

地代借賃増減請求事件受任時の注意点(2)

5  地代又は土地の借賃の増減請求に際しては、「地代又は土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき」(借地借家法11条1項本文)にあたることの主張立証が必要であり、建物の借賃の増減請求に際しては、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」(同法32条1項本文)にあたることの主張立証が必要です。かかる事情変更の事実の主張立証が必要な理由は、賃貸借契約の当事者は賃貸借契約に拘束されるのが当然の原則であるところ、借家借家法が事情の変更がある場合に限り公平の観点から例外的に地代又は借賃の増減請求を認めたにすぎないからです。

したがって、(賃料の最終合意時点から相当期間を経過したことを増減請求の要件とするかについては争いのあるところですが、仮に相当期間の経過を要件としないとしても)、賃料の最終合意時点(契約時または合意更新時)から増減請求時までの期間が短いことは、増減請求者にとって不利な事情となります。また、「賃料の合意をしてみたら、近隣の相場より高いことに気付いたから、減額せよ」というだけでは、事情変更の主張がないに等しく、減額請求は認められません。

6    賃料が不相当と判断された場合には、相当な賃料に増額又は減額されることになりますが、この相当な賃料とは、特段の事情のない限り、いわゆる新規賃料ではなく継続賃料です。したがって、相当な賃料の認定にあたっては、いわゆるスライド方式によって算出された額が重視されることになると思います。

 

2015年4月 2日 (木)

地代借賃増減請求事件受任時の注意点(1)

借地借家法11条および32条の規定する地代または借賃額の増額または減額請求事件を受任する際に、気をつけたほうがよいと思う点を書きます。

1 同事件については、調停前置主義がとられているので、訴えを提起する前に、調停を申し立てなければなりません(民事調停法24条の2第1項)。

2 同事件の管轄は、紛争の目的である宅地または建物の所在地を管轄する簡易裁判所または当事者が合意で定めるその所在地を管轄する地方裁判所です(民事調停法24条)。相手方の住所地には管轄がありません。

3 地代借賃増減請求権は、形成権であり、増額請求または減額請求の意思表示が相手方に到達したときに、賃料が相当額に増額または減額されるという法律効果が生じます。

 したがって、申立書に記載する申立の趣旨については、

①増額または減額の意思表示後に調停を申し立てる場合には、「申立人が相手方に賃貸している別紙物件目録記載の建物についての賃料は平成○年○月○日以降1ヶ月○円に減額されたことを確認する」というように増額または減額された賃料額の確認を求めるものになりますし、

②調停申立時点で増額または減額の意思表示をしていない場合には、「申立人が相手方に賃貸している別紙物件目録記載の建物についての賃料を平成○年○月○日以降(or 本申立書が相手方に到達した日の翌日以降)1ヶ月○円に改定する」というように賃料の改定を求めるものになります。

4 地代や借賃(以下「地代等」といいます。)の増額の請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払えば足りますが、その裁判が確定した場合において、すでに支払った額に不足があるときは、その不足額に加えて年1割の割合による支払期後の利息を支払わなければなりません(借地借家法11条2項、同法32条2項)。

一方、地代等の減額の請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を請求することができますが、その裁判が確定した場合において、すでに支払いを受けた額が正当とされた地代の額を超えるときは、その超過額に加えて年1割の割合による受領の時からの利息を返還しなければなりません(同法11条3項、同法32条3項)。

そのため、当事者間に協議が整わず、調停も成立せず、民事訴訟に至り、判決が確定した場合、敗訴した当事者は、ときには過酷ともいえる利息の負担を強いられることになります。

そこで、同事件を受任するにあたっては、当事者ご本人(依頼者)に対し、敗訴した場合に生じうる上記リスクを十分に説明し、和解や調停成立による解決のメリットを説いておくべきでしょう。

((2)につづく)

2014年4月21日 (月)

公示送達か不在者財産管理人か

公示送達と不在者財産管理人制度の限界事例に遭遇しました。

原告の亡父が約50年前から田んぼとして利用していた6筆の土地のうちの1筆が被告ら(共有者2名)名義の土地であったという事件です。登記上、被告らの氏名が記載されていましたが、被告らの住所は記載されていません。

訴訟物は、所有権に基づく妨害排除請求権としての共有持分権移転登記手続請求権。
所有権の取得原因は、取得時効です。

原告代理人である私は,訴え提起時、裁判所書記官に対し、公示送達を求めましたが、裁判所サイドから、不在者財産管理人選任申立てをしてもらえないかと求められたため、原告ご本人にお願いし、予納金10万円を負担していただいたうえ、不在者財産管理人選任申立てをしました。

民法25条1項によれば、不在者財産管理人選任の要件として「従来の住所又は居所を去った者」であることが必要です。本件において,被告らは、従来の住所も居所も分からない者たちですから,「従来の住所又は居所を去った者」という認定は,やや厳しいです。

他方,被告らは,公示送達の要件である「当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れないとき」(民事訴訟法110条1項1号)をみたしています。

そのため,文言解釈からすると,本件は,不在者財産管理人制度よりも公示送達を選択するほうに分があります。

しかし,いうまでもなく,公示送達よりも不在者財産管理人制度を活用したほうが,被告らの手続保障にとっては好ましい。

そこで,今回,裁判所は,被告らの手続保障を重視し,不在者財産管理人の選任を打診してきたといえます。

なお、本件は,不在者財産管理人選任後,本日,1回の口頭弁論で終結してもらえました。

無事、認容判決をいただけそうです。

 

2013年11月18日 (月)

更新料(2)

賃貸借契約が合意更新された場合には更新料を支払う旨の合意があった場合、賃貸借契約が法定更新された場合にも更新料の支払義務が発生するかという問題があります。

積極説・消極説の両論ありますが、この問題が争われた事件で、消極説を採用した裁判例があります。東京地裁の平成15年12月25日判決です。

この事件で賃貸人は、積極説の論拠として次のとおり主張しました。

①合意更新でも法定更新でも、対象物件を継続使用することに違いはない。

②本件契約では更新料が新賃料を基準に決められており、更新料は賃料の前払的性質を有する。

③法定更新の場合に賃借人が更新料の支払いを免れることになって不合理・不公平である。

しかし,裁判所は,次の理由から,消極説を採用しました。

❶法定更新の場合にも更新料を支払うとする明確な合意が認められない以上,契約書の文言に従った合意の形成があったとみるべきである。

❷本件において,更新料の支払が賃料の前払的性質を有するとの証拠はなく,更新料の支払は更新拒絶の異議権喪失の対価であるとの考えもある。

❸法定更新の場合、実務上、契約期間は期限の定めのないものになると考えられており、合意更新の場合に比較して賃借人が不安定な地位に置かれることになり、合意更新と法定更新とを同列には扱えない。

 

  更新料(1)(2)の記事でお伝えしたかったのは、契約書の重要性です。合意した内容を書面に残しておくことは、契約当事者双方にとって、後日の紛争を予防できるメリットがあります。

  先日、上記議論を意識して作成されたことがわかる賃貸借契約書を目にしました。毎週、相当数の賃貸借契約書を目にしますが、珍しいことです。よく勉強されているなと感心しました。

更新料(1)

宅地賃貸借契約における賃貸借期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習は存在しないと判断した最高裁判決があります(最判昭和51年10月1日・最高裁判所裁判集民事119号9頁)。

そこで、土地や建物の賃借人の賃貸人に対する更新料請求事件においては、賃貸借契約当事者間に更新料を支払う旨の合意があったか否かが争点となるのが通常です。

更新料を支払う旨の合意があったか否かが争点となった場合、賃借人の側に、更新料を支払う旨の合意があったことの立証責任があります。(賃貸人の側に、更新料を支払う旨の合意がなかったことの立証責任があるのではありません。)ですから、賃借人の側で、更新料を支払う旨の合意があったことの立証に成功しない限り、更新料支払請求は認められません。

ところが、賃借人にとって、この立証は容易ではありません。賃貸借契約書に更新料を支払う旨明記されていればよいのですが、明記されていれば、そもそも、合意の存否が争点にはならないでしょう。賃借人は、例えば、「20年前に先代の賃借人(現賃借人の親など)が先代の賃貸人(現賃貸人の親など)に対し更新料を支払った」といった事実(間接事実)をいくつも積み重ねることによって合意の存在を立証するしかありません。

2013年7月22日 (月)

一代限りで借地を明け渡す旨の特約の効力

 借地契約の当事者間で、一代限りで土地(借地)を明け渡すという特約がなされていることがあります。この特約による解約は、借地契約について借地権者の死亡という、いつ時期が到来するかが不確定な期限を設定し、その期限到来により借地契約を解約することを内容とするので、不確定期限付合意解約と呼ばれています。

  借地契約における不確定期限付合意解約の効力については、解釈上、争いがあります。借地借家法9条(借地法11条)が、借地権の存続期間に関する特約で借地権者に不利なものを無効と規定しているからです。

 この点、判例は、①合意に際し、賃借人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり(合理的客観的理由の存在)、かつ、②他に右合意を不当とする事情の認められない限り(不当事由の不存在)、期限付合意解約は、借地法11条に該当せず、有効であるとしています(最判昭和44年5月20日・民集23巻6号974頁)。

 この判例の考え方によれば、一代限りで土地を明け渡す旨の特約の効力は、①②の要件をみたすかどうかのケースバイケースの判断になります。


 その後、下級審の裁判例で、一代限りで土地を明け渡す旨の特約を無効としたものがありますが、これは、当該ケースにおいては①②の要件をみたさないとしたからであって、かかる特約が常に無効であると判断したものではありません。